入笠山ガイド研修

9月24日に入笠山で研修を行いました。
今年も地質の専門家、富樫氏に講師をお願いして
「地形・地質・自然史に目を向けたガイドツアーを考える」をテーマに
入笠山、入笠湿原、大阿原湿原を巡りながら目の前の景色を観察しつつ
解説していただきながら歩きました。

まずはゴンドラで一気に1780mの八ヶ岳を望む展望台へ。
九州から800km以上も連続してきた西南日本がフォッサマグナによって
スパッと断ち切られるその東のへりの突端にいるという解説から
始まりました。

そして断ち切られた先にある凹地と八ヶ岳は成り立ちが全く違うということ。
入笠山までの地質は2億年以上も前の海底で形成された古い岩、一方
八ヶ岳は数十万年前以降の陸地化後に形成された火山の噴出物。
実際の景色を見ながら分かりやすい説明に皆納得です。

次に入笠湿原を目指しシカ柵の中へ。
エゾリンドウの咲く湿原は高層湿原の南限域であるという貴重な場所。

山頂であいにくの雨になってしまいましたが、山頂に露出している緑色岩に
注目して解説していただきました。

大阿原湿原ではシカの食害による植生の変化を入笠湿原と比較して
見ることができました。

入笠山の新たな魅力を参加者の多くが発見できた研修となりました。

担当ガイド:杉本晴美(登山ステージⅡ、自然ステージⅡ、スキーガイドステージⅠ)

沢登り初級研修

9月13,14日に山梨県にて沢登り研修を実施しました。

沢登りは登山のエッセンスが凝縮されています。整備された登山道では学ぶことのできないルートファインディング、基礎的な岩登り、ロープワーク、滝の巻き、ゴーロでの歩き方など学ぶことは多く山の総合力が試されます。

甲斐駒ヶ岳黄連谷右俣は日本を代表する沢ルート。普通は登山口を早朝に出発し1泊2日で山頂に抜け、黒戸尾根を下るというのがスタンダードですが、今回は研修ということで約半分の千丈ノ滝上までで宿泊としました。

千丈ノ滝上には10人は泊まれる岩小屋があります。甲斐駒ヶ岳のバリエーションの開拓で有名な東京白稜会にちなんで「白稜の岩小屋」と呼ばれます。

快適な夜を岩小屋で過ごした翌朝は、黒戸尾根五合目に向けて急傾斜の斜面に苦しみました。五合目小屋跡からは黒戸尾根の名前の由来の黒戸山へ登りました。
山の総合力が問われる沢登りということで参加者の経験値が上がった研修でした。

担当ガイド:三上浩文(登山ガイドステージⅢ)」

ガイドが使う実践ロープワーク研修

5月9日新人向け ガイドが使う実践ロープワーク研修

新規に静岡山岳自然ガイド協会に加入したガイド向けに、実際ガイド中に役に立つ実践的なロープワーク実習を行いました。


登山ガイドが使う、足元に不安のあるお客様のバランス補助としてのショートロープ歩行技術
自力救助が可能な場所での顧客の引き上げ実習を何度も使えるまで実習を行いました。

担当ガイド:平木 順

危急時対応技術研修

4月22日に毎年総会の翌日開催が恒例になっている会員向けの危急時対応技術講習会を、清里高原で実施しました。
今年のテーマは、ガイド中に一番出くわす可能性の高い中程度の怪我の対応を確実にできるようにすること。

○手首の骨折の固定と包帯法
○足首の捻挫及び骨折の手当と搬送法
軽く捻った程度で本人が歩けそうといった場合
 →テーピングによる固定法、松葉杖歩行のための松葉杖作り、バランス補助のための簡易ショートロープ技術

骨折の疑いのあるとき
 →簡易シーネによる固定、ザック搬送、ザック担架
○実際に登山道で転滑落し上記の怪我が発生した想定で、チームレスキュー実習
ガイドが指揮官としてチームで果たす役割の重要性を理解してもらう。

○他に写真はないですが、山で発生すると厄介な傷病の見分け方の実習を行いました。
脳卒中、心疾患、高山病など

少し汗ばむ初夏のような陽気でしたが、各ガイドとシーズンに向けてよい研修会になりました。

担当ガイド:平木 順

三浦半島海辺のエコツアーガイド研修

6月3日、三浦半島の潮風トレイル(神奈川県三浦市宮川港~剱崎灯台)にて研修を行いました。
ツアーの拠点はマグロの遠洋漁業の町「三崎港」普段山域で活動するガイドが多い中、街歩きからスタートしました。三崎港から宮川港を経由して東京湾の出口、剱崎灯台までの約10㎞です。
トレイルに入ると、三浦半島を構成した伊豆・小笠原弧の海底隆起でできたダイナミックな岩峰を横目に歩いていきます。隆起した岩峰の中には、海底で積もった泥岩やスコリアなど火山活動などでできた地層を観察することができます。
海と岩峰の間の平地には海岸性植物の群落も見られます。
高山植物のように背丈の低い海岸性植物。代表的なもので、サクラソウ科のハマボッスは見ごろを迎えていました。
トレイルの途中には大小いくつかの湾を通りますが、そのうちの1つには広大な干潟が形成されていて、求愛のため手を振るチゴガニや、それを狙うサギ類などの水鳥も見られました。
トレイルのクライマックスは逆断層の壁を通過し、剱崎灯台へ到着しました。
海況が悪い時は通過もままならないため、海況や潮見表などを見ながら歩くなど安全管理も山と異なります。
約10㎞の短いトレイルですが、海岸線の人々の生活や自然を垣間見ながら歩くことができ、海を切り口に色々なことを感じ、体験する研修となりました。

担当ガイド:成相 修

植物研修in長野県小諸

5月15日に長野県の小諸地域で植物研修を行いました。
今回は、植物の基礎知識を確認するもので、
様々な図鑑の使い方についての検証や、
身近に生える道草に注目して自然解説方法や知識を学ぶ研修でした。

予報で怪しかった天気も無事に晴れ、新緑の中気持ちよく歩くことができました。
今回出会った春の可憐な植物たち

何気ない道でも、実際に図鑑を片手にフィールドに出てみると
様々な発見があり、改めて現場で確認する大切さや植物の楽しさを
実感していただけたようです。

また、季節やテーマを変えていろんな切り口で植物に関する研修ができたらなと
思っております。ご参加くださった皆様ありがとうございました。

担当ガイド:北村春夏

天覧山・安全管理研修

3月4日(月)~5日(火)埼玉県飯能市の天覧山で研修を行いました。

研修内容はロープワーク、フィックスロープ、ショートロープ、引き上げ(3分の1)、ロワーダウン、懸垂下降、背負い搬送。

1日目は雨天のため、室内での研修を行いました。
基本的なロープワーク(エイトノット、クローブヒッチ、ムンターヒッチ、ミュールノット、ボーラインノット)と3分の1引き上げシステム、ショートロープのセッティングなどを中心に実地。

2日目は天覧山の岩場やその周辺の傾斜地を使い実践的な研修を行いました。

懸垂下降、引き上げ(3分の1)、背負い搬送を実施。
参加人数が少なかったので、ひとつひとつ細かく検証しながら行うことが出来ました。

参加された皆さんが、とても真剣に熱心に取り組んでいただいたので、充実した研修を行えたと思います。

また、今後は簡単なバリエーションルートで読図やショートロープなど、もっと実践的に行える研修がやれたらと思っています。

担当ガイド:西方 太

信越エリアで雪の研修

2月25日、26日に妙高・黒姫エリアで研修を行いました。
25日は妙高山の外輪山のひとつ、赤倉山でバックカントリースキー研修でした。妙高エリアでも人気のバックカントリースキーで賑わう場所です。
今回は杉ノ原スキー場から入りました。ビーコンチェックから始まり、ルートファインディング、休憩箇所の選択、ペース配分など意見交換しながら先頭を交代しながら終了点まで登りました。

終了点で積雪層の状態をチェックして滑走を始めました。

日差しでザラメに変化した雪面は滑走には良い状態になり気持ちよく滑走できました。



もちろん滑走を楽しむだけではなく、安全管理技術も行いました。スキー板を支点に引き上げや雪崩捜索練習なども色々と試しながらできるのも研修だからこそです。

26日は黒姫高原にある御鹿山周辺で雪のルートガイディング技術と安全管理技術の研修です。この日はスノーシューで行いました。
ルートファインディングしながら自然解説のネタをシェア。

今日は林間の急斜面で引き上げの復習

雪の上でのツエルト設営は時間を制限して行いました。

複数埋没時の雪崩捜索練習もビーコンの機能を確認しながら行い、複数を探す時の難しさも実感しました。

最後は目的地までルートファインディング。

積雪期ならではの技術は練習できる場所も限られますが、遠方からも意欲のある参加者が揃い、みっちりと研修できました。

担当ガイド:杉本晴美

山梨地図読み研修会

12月9日甲府市北部の山で地図読み研修を行いました。

整備された登山道のないところで地形を読みながら行動すると、地形図を読む力が飛躍的にアップします。「地形図は地形を読む道具です!」傾斜がなく複雑な地形の猫坂周辺は甲府市の奥です。
まず屋内でしっかり予習したうえでフィールドに出ました。小さな尾根を登ったり下ったりしながら、古道みたけ道も歩いた地図読み山行です。深田久弥の日本百名山にこんな風に登場する猫坂です。

「金峰山は私の長い山歴の中で、ごく初期に登った山の一つである。・・・もちろんバスなど無い頃だから、歩いて昇仙峡へ行った。どんづまり御岳の金桜神社で昼弁当を食べて、さらに奥の黒平村(くろべらむら)へ向かった。それが金峰山登拝の表参道である。従って途中いろいろの名がついている。黒平へ行くまでに猫坂というのを越えた。その峠の上から金峰・朝日と続く奥秩父連山を一望に収めて、まず最初の快哉を叫んだ。」

三角点名大森1233.8m 三角点柱石の話し、三角点点の記の話し、道のない山では絶対的存在の三角点です。

猫坂の様子です。金桜神社から黒平に行く古道の峠の猫坂です。山の神の石祠と、金峰山講中登山の鳥居の礎石がたたずんでいる静かな峠です。

猫坂から黒平集落に向かう道はやぶだらけです。峠から樹間に金峰山が覗くようになると足元に馬頭観音です。

猫坂横の甲府市営林道御岳線が通っています。道路の切通によってわかりにくくなってしまった主稜線は、黒富士というピークからのつながり。

地形図を読むことによって理解できる切通しにて集合写真。お疲れさまでした!

三上 浩文 (登山ステージⅡ)

静岡フリークライミング研修会

11月18日・19日の二日間、静岡県内でフリークライミング研修を行いました。
天候不順のため日程を入れ替え、初日は岩場でクラッククライミング、二日目はインドアで東京2020オリンピックの競技内容に沿った、模擬競技を行いました。


一日目の研修、場所は伊豆城ケ崎海岸です。
城ヶ崎海岸は、4000年前の大室山の噴火で流れ出た溶岩が海岸まで達し、海などの侵食で出来上がった切り立った崖となっています。その溶岩が冷える過程等で、岩が割れた「クラック」を今回は登りました。

基本となる装具の点検、エイトノット、ビレイ方法などのチェックをします。またテーピング方法なども行います。
クライミングは間違えを起こさなければ比較的安全ですが、間違えは即重大事故につながるので、基本事項は何度もチェック・点検します。


その後クラッククライミングの実践です。
通常のクライミングでは岩の突起を手で持つ・足先で乗り込むことで登るのですが、クラッククライミングは岩の割れ目を利用し、その形に手足の形を合わせてから岩に詰め込む、ジャミングという技を使って登ります。
岩の形態は様々、複数のルートを、それに合わせたジャミングを駆使し登りました。
慣れないジャミングで大変でしたが、クライミングの違ったテクニックを知ることにより、よりクライミングの幅が広がりました。

二日目は富士市にある「サニーロック・ブルーキャニオン」、クライミングジムでの研修です。
東京2020オリンピックで追加種目に採用された「スポーツクライミング」
メディアに取り上げられる回数が増え、街にはボルダリングジムもあふれ、今俄然注目されています。

競技内容は「スピード」・「ボルダー」・「リード」の三種目を一人で行う「複合競技」となっています。
●スピードは速さを競います。
高さ15mの壁をどれだけ早く登れるか
●ボルダーは登れた数を競います。
4課題を時間内にいくつ登れるか
●リードは登った高さを競います。
12m超の高さの壁をどこまで登れるか


これらの競技を、参加者のレベルに合わせた方法で行いました(リードはトップロープで)
実際に模擬競技を行うことで、選手がいかに凄い事を行っているのか実感できました。
特にスピードは登るだけでも大変で、選手のタイムがあまりにも早いことに気付き、みな驚きの連続でした。

模擬競技を通し、皆が一つの目的でクライミングを行うことで、クライミングの楽しさ・面白さを再発見できたようです。

富永 浩司(フリークライミング インストラクター)