2024年11月SMNGA研修 『ショートロープ実践・燕岩岩脈』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ ショートロープの準備、ポイント、実践
  • 開催日時:2024年11月25日(月)
  • 場所:甲府市マウントビア黒平、燕岩岩脈
  • 参加人数:15名

研修内容

前日のロープワーク基礎編に続き、ショートロープ実践をしました。ゲスト(お客さん)がバランスを崩した時に転倒しないよう、ロープで繋いで滑落を防ぐ確保技術がショートロープです。参加人数も多かったので、ショートロープの準備をして形を作った後、ロープを繋いでからの行動中の注意点を文章化した資料を作りました。ゲストとつないだロープに遊び(弛み)があるといざというときに止められないばかりか、自分も引き込まれて滑落してしまいます。そうならないための注意点がたくさんあるショートロープです。

ショートロープの動作を文章化した資料を皆で読み込みます

手元にコイルを作ってロープを持ち、コイルの大きさやロープを繰り出すときにスムーズに出せるかとか、コイルを反転させてロープを殺す(ロープをロックさせるという意味です)のですが、それを谷側でもっていなければならないとか、こうしなければということがたくさん登場します。二人一組で斜面を斜めに登ったり下ったりを繰り返して基本的な動きを確認していきます。あっちこっちで「殺して、殺しが、殺されて…」なんだか殺されまくっていた練習風景でした。

習熟度が問題となります。中途半端な習熟度では使うべきではありません。

燕岩岩脈は山梨百名山の黒富士の火山活動で出来た岩稜です。マグマや溶岩が冷えて固まった安山岩で、柱状節理や板状節理を見ることが出来ます。そんな岩が露出している尾根上の両側がスパッと切れているのでロープを使った確保が必要になります。

このままロープを伸ばしてスタカットにしようと考え中

甲府市郊外の黒平地区は典型的な太平洋側の気候です。冬らしい空が青い素晴らしい日でした。いつもの安定した青空が広がった燕岩岩脈でした。

最奥に日本百名山の金峰山、左のとんがりは甲州百山のミミ石

ふつーに整備された登山道はありません。危険な燕岩岩脈の岩稜へのアプローチでは読図が必要です。そんな場所に行ってロープワークをするということは山の総合力が高くないとできません。そんなことが当たり前にできるガイドが多くいる静岡山岳自然ガイド協会です。自炊のマウントピア黒平での夜をみんな楽しみにしているんじゃないかな?ということで一日目の午後は買い出しに勤しんで研修には参加しなかった僕でした。

マウントビア黒平のコテージでの様子。とりあえず、乾杯!

2024年11月SMNGA研修 『ロープワーク基礎』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ ノット(結び)の構造や使用用途・目的などを整理して、ロープワークのバックグラウンドとなる基礎知識を学ぶ。
  • 開催日時:2024年11月24日(日) 9:30~16:00
  • 場所:甲府市マウントビア黒平
  • 参加人数:13名

研修内容

私たちガイドが使うロープワークのその前に
「そもそもロープとは何か?」という概念的なところから、製品としての技術的なデータ、ノットの分類や部分名称、ノットの構造やノットを機能させるステップ、ノットの使用用途や目的など、ロープワークのバックグラウンドといえる基礎知識があります。
これらを正しく理解することでガイドとしてのロープワークを深めるという研修でした。

マウントピア黒平の野外広場で車座になって学びました。
座学でしたが、ほとんどのガイドが椅子やシートを車に常備しているようで(笑) ホワイトボードも置いて、青空の下での野外勉強会となりました。

座学の様子

ヨット、カヤック、ロープアクセス、沢登りやクライミング、特殊伐採、漁師など私のロープ経験の中で、海や山、仕事や遊びのそれぞれに大切にすることや嫌うことの違いをお話しながら、登山ガイドの使用するロープワークとはどんな位置なのかを考えてもらいました。

各ノット(結び)の特徴

次に具体的に登山ガイドに必要な26のノットの結び方・解き方を参加者全員が手元のロープで試しながら「何に使うか?」「どう使ってはダメか?」を説明しました。
加えてノットの構造を観察し、手技を間違えた場合に起きる形、正しく修正する方法などを学びました。

ロープの取り扱いではロープのまとめ方やスリングの束ね方の種類、ロープの収納、懸垂下降時やビレイ時の整理、ロープの投げ方などを実習。これら準備動作はロープ使用する際には必ず行うため、時間が掛かると顧客を待たせたり危険なエリアで長時間行動することにつながります。また急いで雑に行えば意図しないところでトラブルを生むため、綺麗・丁寧且つ速くするためのポイントを説明・実習しました。

最後に残った時間で顧客をスリング(お助け紐)を使用してフォローする使用方法や斜面を利用したボディビレイの危険性などを体感してロープワーク基礎の研修を終えました。
研修は翌日の「ショートロープ実践」へとつづきます

ショートロープ技術の実践

研修の概要

  • 研修の目的:
    ショートロープ技術の実践
  • 開催日時:2023年10月27日(月)
  • 場所:甲府市黒平 燕岩岩脈周辺
  • 参加人数:11名

研修内容

前日の平木ガイドによる基礎編を経て、実際にフィールドでショートロープを実践するというロープワーク2日目。
今年、ロープがらみの各種講習会に行った時、まずロープのセンターマークがあるかどうか確認します。ほぼ毎回センターマークがない人がいるので、いつも持っているナイロンにダメージを与えないマーカー(ペンタイプ)を貸してマーキングしてもらいます。センターマークはロープを伸ばした時、ロープの残りの長さの目安になります。

次にロープの束ね方で、首で束ねる振り分けと、手で束ねる振り分けと、手で行うコイルにする束ね方が必要だという説明です。首で束ねる振り分けは早いからです。手で束ねる振り分けは連続してロープを使う場合早く束ねられるし、極端に言えば歩きながらでもロープを束ねられます。コイルは背負い搬送に使えます。どの束ね方にも共通するのは最後の末端処理のひと巻きひと巻きをしっかり締めるということです。ひと巻きが緩いと束ねたロープはばらけてしまいます。

ショートロープはロープを使った確保技術です。体にセットするショートロープの仕掛けだけ出来ても、理屈がわかっていないと形だけになってしまうと考えました。実際に燕岩岩脈に行く前に、いくつかの確保方法とクライミングのシステムの理解、懸垂下降の理屈などを午前中にやりました。確保は、肩がらみまたは腰がらみ、立木にスリングを回したムンター、立木を使ったテレインビレイです。それぞれの負荷のボリュームを実感することと方法の確認でした。肩がらみ腰がらみは支点が確保できない場合にどうしてもしなければなりません。ポジション取りをどうするかということで、セカンドの人に急斜面をロープでごぼう登りをしてもらいました。ごぼう登りを肩がらみで支えるということだけでも結構な負荷です。ムンターが一番確実ですが時間がかかります。テレインビレイはしっかり角度を考えないと使えません

肩がらみの様子
懸垂下降中
素晴らしい展望の燕岩岩脈
燕岩岩脈の様子
下山は読図

ロープワーク全般に言えることですが、基本の結びから、それをどんなスチュエーションで使うかということなのですが、その引き出しを持っていないと実践で使えないわけです。今回の確保方法だけでなく、参加者の経験値、引き出しを増やすような研修にしたいと思っていますが、1度や2度の研修ではスキルアップは難しいと思うので、それぞれの会員が経験値を上げていっていただきたいと思いました

お疲れ様でした。
夕日を浴びる燕岩岩脈

2023年11月26日 「ショートロープ技術基礎」

研修の概要

  • 研修の目的:
    ショートロープ技術のおさらいと研修
  • 開催日時:2023年10月26日(日)
  • 場所:マウントビア黒平
  • 参加人数:10名

研修内容

夏山シーズンを終えても、ガイド技術の研鑽は続きます。

今回は2日間で、「ショートロープ歩行技術」のおさらいと研修を行いました。

1日目は平木ガイドが担当で、ショートロープ技術基礎編を行いました。

ショートロープ技術は、一見お客様とガイドをロープ等でつないで、歩いているだけに見えます。

そのため、危ない所でお客様が足を滑らせたときに、それ以上落ちないための技術だと誤解されます。

実際の山行中でこの技術が使われることが多いのは、疲れて少しふらつきなどが見られるお客様への転倒防止のためのバランスの補助、山行中危険なところの通過時の補助の時です

時間的にも長く行われる可能性があるので、力学的、身体工学的、用具的に、理にかなった方法でなければ、かえって危険なことになります。

参加したガイドすべてが少しの誤解もなく、この技術を理解するため、基礎からじっくり検証を行いました。

ロープを橋に見立て体験してみました

ロープの疑似一本橋でバランスの悪い状態を作りだし、どの方向に、どの高さで、どれくらいの力で、どのような体勢で導くのが良いのか?それぞれ、ガイド役、お客様役を替わりながら、自分で体験をしました。

長めのスリングを使用しショートロープ技術の復習

次に、比較的すぐにザックから引っ張り出せる長めのスリング使って、平地、坂道で簡易ショートロープ技術の復習をしました。

実際にロープを使用してトレーニング

そしていよいよロープを使ってトレーニングをしました。

テレインビレイの確認

ロープを使う利点は、急な坂道などで、ガイドがお客様を安全にビレイできることです。自然物を使うテレインビレイや、スリングなどで支点を作りだす方法、ガイド自身の体を支点にするボディビレイなどのおさらいをしました。

明日は、三上ガイドによる山での実践トレーニングを行いました。 続く

沢登りと幕営

研修の概要

  • 研修の目的:
    初級の沢登りと沢の中で幕営をすることによって山の経験値を上げる。。
  • 開催日時:2023年10月3日(火)〜4日(水)
  • 場所:尾白川鞍掛沢~乗越沢~鞍掛山~錦の滝
  • 参加人数:6名

研修内容

山の総合力を磨くなら沢登りといわれます。ガイドとして山の総合力を磨くために、山梨県の尾白川鞍掛沢~乗越沢~鞍掛山~錦の滝を1泊2日で歩いてきました。

林道下降点で地形図を確認
乗越沢出合の滝を登ります

整備された登山道はなく、眼前に次々と障害物が現れるのが沢です。ロープでしっかりと確保し安全ななことを確認したうえで沢を登っていきます。

女夫の滝でのリードの様子
女夫の滝でのフォローの様子
ロープで安全を確保しています
鞍掛山南峰に到着

傾斜のある滝などのイメージですが、普通の河原状のところでも、やはり最近の雨の降り方が酷くなったことによる変化を強く感じました。水で運ばれた不安定な岩が多いと思ったわけです。こういった現象は沢に特化したものではなく、これからは林道や登山道の崩落などは常に意識しなければならなくなるのだと思います。崩れたところをどう登るか?どう下るか?というテーマに対応した研修になりました

山の恵み(サルナシ)も見つかりました