2024年10月SMNGA研修 『伊豆半島の成り立ち』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 伊豆半島の成り立ちやジオについて学ぶ
  • 開催日時:2024年10月30日(水) 10:00~16:00
  • 場所:大室山・城ヶ崎海岸
  • 参加人数:10名

研修内容

10月30日(水)に伊豆半島ジオガイド協会の加藤さんを講師に、大室山や城ケ崎海岸で伊豆半島の成り立ちやジオについて勉強してきました。

伊豆半島は海底火山時代の地層と陸上火山時代の地層に大きくわけられ、伊豆半島にある火山は伊豆東部火山群といわれており、陸上で約60個、海中も合わせると約100個ほどの火山が存在しており、日本では珍しい単成火山だそうです。(日本の火山のほとんどは成層火山)。
伊豆半島にある天城山は海底火山が起きた後、地上でも噴火した2層構造になっているため、あのような標高の高い山なのだそう。

午前中は大室山に登る予定でしたが、ガスのため何も見えなかったので、城ケ崎海岸に移動し大室山が噴火したときの溶岩が流れた後を観察しました。
このように扇状地系になっているものを、溶岩扇状地というそうです。

溶岩扇状地(赤丸部分)

その後に観音浜ポットホールへ移動。直径が約90センチ、数百年程の歳月をかけて塩類風化(タフォニ)によりできた大きな円形の穴を見ました。(中には大きな丸い石があります)

午後からは大室山に移動し、リフトで山頂に行きました。大室山は約4000年前の噴火によりできたそう。山頂から当時どのように溶岩が流れ出たのかを観察しました。午前中に行った城ケ崎の払火山の場所なども確認することができました。上から見ると、全体の様子が分かるので午前中に見たことや学んだことを復習できました。

大室山の山頂より

現在私たちが見ているものは、ものすごい歳月をかけて今の形になっているんだと改めて自然の偉大さを感じさせられました

今回研修に参加した協会のメンバーと講師の加藤さん

2024年9月SMNGA研修 『上高地の時空を散歩する』

研修の概要

  • 研修の目的:
    外部講師を招いて、「上高地の時空を散歩する」をテーマに、上高地と周辺の山々の成り立ちやガイドトークのコツを学ぶ。
  • 開催日時:2024年9月25日(水) 10:00~26日(木)14:30
  • 場所:上高地(大正池~ワサビ沢付近)
  • 参加人数:13名

研修内容

技術士事務所「地久学舎」の富樫均さんを講師にお迎えして、天気に恵まれた上高地で2日間の「時空散歩」をしてきました。
富樫さんにはこれまで4回、長野県内各所で地形・地質に目を向けたガイドツアーを考える研修をお願いしてきました。普段山を歩いていても目に留めない場所を地学の目線でピックアップし、ガイドに役立つ内容を噛み砕いて解説いただけるので人気の研修です。

穂高連峰の展望地では、穂高連峰の岩山はどのようにできたか説明を受けました。
穂高がかつて火山だったとは現在の姿から想像が難しいですが、175万年前に巨大噴火を起こし、噴火と同時に地表が陥没していく巨大なカルデラ火山でした
穂高連峰は噴火しながら大量の火山灰がカルデラ内に溜まり、熱によって溶結した溶結凝灰岩が約5000m隆起し侵食され、硬い岩峰が残ったものです。
梓川の河原には多種類の石ころが転がり、溶結凝灰岩の観察もしました。

穂高連峰を見ながら巨大カルデラ火山を想像します
溶結凝灰岩を河原で観察

梓川沿いのほとんど平坦な散策路を歩いて大正池に着くと目の前にドーンを迫る焼岳の景色を見ながら上高地の成り立ちの解説に耳を傾けます。
1万2000年以前には焼岳火山群は存在せず、古梓川は岐阜側に流れていました。
1万2000年前に焼岳火山群の噴火によって古梓川は堰き止められ、古上高地湖ができ、やがて決壊して山岳域に珍しい平坦地が出来上がりました。そして長い年月を経て現在の上高地が出来上がっています
そんな上高地の成り立ちを知らずに観光に訪れる人がほとんどだと思いますが、学ぶことで過去のダイナミックな変化を想像し、現在の緑豊かな森と岩山の風景に魅せられ、未来の上高地を考える機会になりました。

焼岳を見ながら上高地の成り立ちの説明を受けます
焼岳と大正池

ウェストン碑がはめ込まれている滝谷花崗閃緑岩は約140万年前にできたもので、穂高連峰を作っている溶結凝灰岩と共に桁外れに速い速度で隆起して地表に出てきた世界一若い花崗岩といわれています。140万年前が世界一若い、というすぐに納得し難い年代の考え方ですが、地学は億単位の話、慣れが必要です。

ウェストン碑がはめ込まれている滝谷花崗閃緑岩の説明をする富樫氏

そんな億単位の岩が露頭しているところも観察しにいきました。
日本列島の土台となる約2億年前の深海底に堆積した泥岩が徳本峠分岐から少し徳沢寄りに見られます。これまでとは違う薄く剥がれるように割れる岩です。

2億年前の日本列島の土台となる泥岩の路頭

最後に自然状態の梓川が見られる場所へ。本来の上高地の姿と説明を受けました。現在の上高地は梓川沿いが広く護岸工事されています。観光のための宿泊施設や散策路、管理道を維持する必要があるためです。
観察したポイントは土砂が流れ入り、中州が作られたり流されたり、川の流れが変わったりと人の手が加わっていない唯一の場所だということでした。上高地が1万年後、10万年後自然のままならどんな変化をしていくのか、護岸工事がされていくのか、未来を想像しながら研修が終了しました。

工事など人の手が入っていない唯一の自然状態の梓川

地学の話は一度聞いただけではなかなか理解が難しいところがありますが、ガイドツアーに活かせるように質問、疑問を講師にぶつけ、充実した「時空を散歩する」研修になりました。

地形地質に目を向けたガイドツアーを考える 霧ヶ峰

研修の概要

  • 研修の目的:地質の専門家から地形地質目線で霧ヶ峰を解説できる話やポイントを歩きながら学び、知識を深める
  • 開催日時:2023年7月10日(月)9:00〜15:00
  • 場所:霧ヶ峰(鷲ヶ峰、八島ヶ原湿原、旧御射山神社)
  • 参加人数:16名

研修内容

4年ぶりにいいづな歴史ふれあい館館長の富樫均氏に講師をお願いして、霧ヶ峰を地形地質目線で解説してもらいながら歩いてきました。
富樫氏にはこれまで黒斑山、北横岳、入笠山でも同様な研修を担当していただき、全てに参加している方が今回16名中4名いたリピーターも多い人気の研修です。

自己紹介の様子

集合時は雲が厚くガスもかかる天気でしたが、鷲ヶ峰の稜線に登り上げると霧ヶ峰の全貌が見えてきたドラマチックな展開になりました

ガスが取れてきて全貌が見える霧ヶ峰


その展望を見ながら富樫さんの解説は「霧ヶ峰火山の古い地形」というところから始まりました。興味深い話にいろいろと質問が飛び交いましたが、丁寧に答えていただきました。
地学は年代も規模もスケールが大きく馴染み難い分野ですが、それを噛み砕いて分かり易く解説してくれるので参考になります。

鷲ヶ峰山頂は解説していただいたポイントがよく見える展望の良い場所です。改めて景色を見ながら確認しました。

鷲ヶ峰山頂にて

八島ヶ原湿原まで下りて、高層湿原を間近に見ながら旧御射山神社へ。地形を活かした桟敷跡や祭り事の際のかわらけも見ることができました。

八島ヶ原湿原の高層湿原

最後に昨年リニューアルした霧ヶ峰自然保護センターを見学。リニューアルの中心になった担当者の方から展示で大事にしていることなどお話を伺うことができました。

霧ヶ峰自然保護センターでの一コマ

山歩き初心者でも気軽に歩ける霧ヶ峰はニッコウキスゲやレンゲツツジなどの花が有名ですが、歴史、文化、地形地質などいろいろな視点でガイディングができるような研修となりました