2025年1月SMNGA研修 『積雪期の読図』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 積雪が十分にある場所での読図とルート取りを実践すること。
  • 開催日時:2025年1月31日(金)
  • 場所:斑尾高原 沼ノ平湿原周辺
  • 参加人数:3名

研修内容

積雪が十分にあるエリアでは登山道、散策路は雪の下に隠れ、どこでも歩ける反面、元の場所や目的地に行けるよう特徴的な地形を見逃さず、常に現在地確認して行動することが求められます
窪地や沢、雪崩地形など危険地帯の把握や回避または注意喚起などを含めた安全に配慮したルート取りも重要になります。
そんな積雪たっぷりの斑尾高原の沼ノ原湿原で雪の中の読図研修を行いました。

沼ノ原湿原を移動

降雪後の沼ノ原湿原は70〜80cmの新雪で、急遽スノーシューからスキーシューに道具変更しても、終始膝〜膝上のラッセルを強いられました。

ラッセルで移動中

特徴的な地形に番号をつけた1/25000地形図を見ながら先頭を交代しつつ順番に番号を巡り、各番号のポイントでは「なぜこの場所か」という理由を共有し、読図力を高め合いました。

読図中
読図中

この冬は久しぶりに雪山登山やスノーシューハイキング、バックカントリースキーが楽しめる積雪量になっています。ガイドと一緒に雪のアクティビティはいかがでしょうか。

2024年12月SMNGA研修 『無雪期読図・定光寺』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 読図力の向上、基本とポイント確認、オリエンテーリング実践
  • 開催日時:2024年12月18日(水)
  • 場所:愛知県 定光寺公園周辺地形
  • 参加人数:6名

研修内容

担当講師が、とあるオリエンテーリング大会のコース設定をしたことから、その大会地図を活用した読図研修となりました。普段見慣れている2万5千分の1地形図とは異なるので、参加者皆さん最初は戸惑いながらも、道なき道を進んでいきました。地図を普段どう見ているか? 現在地はどう把握しているか? オリエン地図の見方は? などなど、話合いながらの研修スタートです。

地図を見ながらスタート地点へ

オリエンテーリング大会で使用した地図は1万分の1。等高線間隔は5m。距離感や尾根と沢の見え方など、序盤は感覚の調整が必要となりました。ただし、読図の基本的考え方は縮尺が異なっても同じです。

読図練習にはオリエン地図もいいです

先頭を順番に交代しながらポイントに向かいます。どういう考え方でここまで来たのか、次はどのように進むのか、見るべきものを言葉にして、考え方を共有しながら進みます。

次のポイントまでどういくか?(考え中)。

目指すポイントは一般登山道の上にはありません。道なき道を、地図とコンパスを頼りに、尾根や沢、ヤブの途中にあるポイントに向かって進んでいきます。もちろん読図練習中は、スマホの地図アプリは見ません

どの方向にどれだけ進むか意見交換中。

万一迷ったときには、何を頼りに、どうリカバリーするか? 普段のツアーでガイドが道に迷うことはありませんが、イザというときに備えて読図力を磨いております

ゆる~い尾根や沢をどう読み取るか?

午後は2人一組になって、オリエンテーリングコースを実践。楽しく面白い読図研修となりました。
静岡山岳自然ガイド協会のガイドは普段から読図力を磨いております。バリエーションルートでも、どこへでも、行きたい山域があれば、一度お問い合わせください!

研修終了時の感想/意見交換。

2024年12月SMNGA研修 『クライミング』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ フルークライミングで扱う道具やテーピングについての理解を深める。実際にクラックを登る。
  • 開催日時:2024年12月6日(金)~7日(土)
  • 場所:城ケ崎(ファミリー、あぶなね)
  • 参加人数:8名

研修内容

1日目 ファミリークラック

対馬の滝、橋立のつり橋を見学後ファミリークラックエリアに降りました。

アンカーボルトの見分け方

リードクライミングはアンカーボルトにクリップしながらロープを伸ばし墜落の際にはビレイヤーに確保してもらうのですが、このアンカーボルトの強度が貧弱だと墜落に耐えられず抜けたり破断してしまいます。UIAAでクライミング用具には20kN以上の強度が求められていますが、古くからあるルートではこの強度以下のアンカーボルトがあり、知らないで登るのはリスクが高いのです。
アンカー部分は岩に埋められて見ることはできませんが、模型を使いボルト面をみればおおよその埋め込み深さや強度を判断できるよう学びました。

アンカーボルトの見分け方

次にカムの原理の説明。カムは墜落すると開いて岩を押し広げようとしますが、岩は固く動かないのでそれが摩擦力に変わり支持力を得ます。なので広がる力を受け止める形状がなかったり、岩が脆かったり、摩擦がなかったり(濡れてる、塩がついてるなど)すると外れてしまいます。逆に言えばこの条件以外のセットができれば墜落を受け止めることができます。
アンカーボルトは打った人しか施工状況が分からず、ボルトがあるからと信用してはいけない、まずは確認することです。なのでカムは自分でセットするので安心ですね。

テーピング方法

クラックを登るので手の甲をテーピングで保護します。
貼り方は様々な方法があるのですが、ここでは基本の貼り方を習い、あとは他の方法を見るなどして自分なりにアレンジします。何が正解かはありません。
ジャムグローブというのがあるのですが、これは摩擦力がありジャミングの膨らませて岩に引っ掛ける感覚が覚えられないので、当初は使わない方が上達は早いです

クラッククライミング実践

ファミリーにあるビギナーズ・クラック、ベビー・クラック、アンクル・クラックにトップロープを張り登りました。慣れないジャミングに皆とまどいながらも少しずつジャミングの感覚を覚えて登れるようになりました。

懸垂下降からのフリクションヒッチでの登り返し

懸垂下降はトラブルなどで登り返さないといけない場面が出てきます。この時にスリングを使った登り返し方法を学びました。
プルージック・ブリッジプルージック・オートブロック(マッシャー)・クレイハイストなど色々な巻き方がありますが、巻き方による違いを覚え実践しました。これを覚えると登り返し以外にも様々な時に役立てることができます。

2日目 あぶなね

クラッククライミング実践

電光クラック
電光クラック
対岸ハンド
くちばし
トロピカルフィッシュ

電光クラック・対岸ハンド・くちばし・トロピカルフィッシュを登りました。
昨日のジャミングを復習しながら、より精度の高いジャミングを練習します。

グリグリでのビレイ方法

グリグリはテンションがかかった時の保持がATCなどに比べ圧倒的に楽です。またビレイヤーのアクシデントで万が一、手を放してしまっても止めた状態を維持する事ができます。安全率がかなり上がります
ただ慣れないと繰り出し操作が大変で、特にリードのビレイには気を使いますが、トップロープのビレイはとても楽で体への負担がかなり減りますのでお勧めです。ぜひ使ってみていただきたいビレイ器、しっかりと操作構造を理解している指導者に習う事が大切です。

皆の粘り強さがすごい、一人一人が登り切った爽快感を味わえたようでした。
二日間登りまくりの皆さん、後半はお疲れの様子。日が陰り寒さも厳しくなり、疲労下での寒さはケガがの元、少し早めでしたが終了しました。

一人一人が色々な感じ方でしたが、クライミングの醍醐味の一つ達成感を味わえたようでした。
クライミング、上達には繰り返したくさん登ることが必要です。
努力して覚えたクライミングの動きは、何歳になっても自分の体が覚えていますので、年齢を重ねても長く楽しめるのがクライミングの良いところだと思います。

2024年11月SMNGA研修 『ショートロープ実践・燕岩岩脈』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ ショートロープの準備、ポイント、実践
  • 開催日時:2024年11月25日(月)
  • 場所:甲府市マウントビア黒平、燕岩岩脈
  • 参加人数:15名

研修内容

前日のロープワーク基礎編に続き、ショートロープ実践をしました。ゲスト(お客さん)がバランスを崩した時に転倒しないよう、ロープで繋いで滑落を防ぐ確保技術がショートロープです。参加人数も多かったので、ショートロープの準備をして形を作った後、ロープを繋いでからの行動中の注意点を文章化した資料を作りました。ゲストとつないだロープに遊び(弛み)があるといざというときに止められないばかりか、自分も引き込まれて滑落してしまいます。そうならないための注意点がたくさんあるショートロープです。

ショートロープの動作を文章化した資料を皆で読み込みます

手元にコイルを作ってロープを持ち、コイルの大きさやロープを繰り出すときにスムーズに出せるかとか、コイルを反転させてロープを殺す(ロープをロックさせるという意味です)のですが、それを谷側でもっていなければならないとか、こうしなければということがたくさん登場します。二人一組で斜面を斜めに登ったり下ったりを繰り返して基本的な動きを確認していきます。あっちこっちで「殺して、殺しが、殺されて…」なんだか殺されまくっていた練習風景でした。

習熟度が問題となります。中途半端な習熟度では使うべきではありません。

燕岩岩脈は山梨百名山の黒富士の火山活動で出来た岩稜です。マグマや溶岩が冷えて固まった安山岩で、柱状節理や板状節理を見ることが出来ます。そんな岩が露出している尾根上の両側がスパッと切れているのでロープを使った確保が必要になります。

このままロープを伸ばしてスタカットにしようと考え中

甲府市郊外の黒平地区は典型的な太平洋側の気候です。冬らしい空が青い素晴らしい日でした。いつもの安定した青空が広がった燕岩岩脈でした。

最奥に日本百名山の金峰山、左のとんがりは甲州百山のミミ石

ふつーに整備された登山道はありません。危険な燕岩岩脈の岩稜へのアプローチでは読図が必要です。そんな場所に行ってロープワークをするということは山の総合力が高くないとできません。そんなことが当たり前にできるガイドが多くいる静岡山岳自然ガイド協会です。自炊のマウントピア黒平での夜をみんな楽しみにしているんじゃないかな?ということで一日目の午後は買い出しに勤しんで研修には参加しなかった僕でした。

マウントビア黒平のコテージでの様子。とりあえず、乾杯!

2024年11月SMNGA研修 『ロープワーク基礎』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ ノット(結び)の構造や使用用途・目的などを整理して、ロープワークのバックグラウンドとなる基礎知識を学ぶ。
  • 開催日時:2024年11月24日(日) 9:30~16:00
  • 場所:甲府市マウントビア黒平
  • 参加人数:13名

研修内容

私たちガイドが使うロープワークのその前に
「そもそもロープとは何か?」という概念的なところから、製品としての技術的なデータ、ノットの分類や部分名称、ノットの構造やノットを機能させるステップ、ノットの使用用途や目的など、ロープワークのバックグラウンドといえる基礎知識があります。
これらを正しく理解することでガイドとしてのロープワークを深めるという研修でした。

マウントピア黒平の野外広場で車座になって学びました。
座学でしたが、ほとんどのガイドが椅子やシートを車に常備しているようで(笑) ホワイトボードも置いて、青空の下での野外勉強会となりました。

座学の様子

ヨット、カヤック、ロープアクセス、沢登りやクライミング、特殊伐採、漁師など私のロープ経験の中で、海や山、仕事や遊びのそれぞれに大切にすることや嫌うことの違いをお話しながら、登山ガイドの使用するロープワークとはどんな位置なのかを考えてもらいました。

各ノット(結び)の特徴

次に具体的に登山ガイドに必要な26のノットの結び方・解き方を参加者全員が手元のロープで試しながら「何に使うか?」「どう使ってはダメか?」を説明しました。
加えてノットの構造を観察し、手技を間違えた場合に起きる形、正しく修正する方法などを学びました。

ロープの取り扱いではロープのまとめ方やスリングの束ね方の種類、ロープの収納、懸垂下降時やビレイ時の整理、ロープの投げ方などを実習。これら準備動作はロープ使用する際には必ず行うため、時間が掛かると顧客を待たせたり危険なエリアで長時間行動することにつながります。また急いで雑に行えば意図しないところでトラブルを生むため、綺麗・丁寧且つ速くするためのポイントを説明・実習しました。

最後に残った時間で顧客をスリング(お助け紐)を使用してフォローする使用方法や斜面を利用したボディビレイの危険性などを体感してロープワーク基礎の研修を終えました。
研修は翌日の「ショートロープ実践」へとつづきます

2024年11月SMNGA研修 『秋の植物観察~入門編~』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 植物を図鑑で調べるスキルを身につけ、解説知識を得る。
  • 開催日時:2024年11月10日(日) 9:30~16:00
  • 場所:田貫湖ふれあい自然塾
  • 参加人数:8名

研修内容

今回は生憎のお天気でなかなか外に出られなかったため、
屋内を中心にワークをしながら植物についての理解を深めました。

ワークその1:フィールドビンゴの作成
9つのマスに、今の季節に観察できそうなものを記入してもらい、
実際に外に出て探してみるゲーム。他の人が作ったビンゴを比べてみることで
自分には無い表現方法や視点を学ぶことができました。実際にやってみることで
フィールドを新たな視点で楽しみながら見ることができるのでおすすめです

フィールドビンゴの様子

ワークその2:図鑑トレーニング
僅かな晴れ間を狙って外へ!
実際に図鑑を使って樹木を調べます。
最初は図鑑で調べることに苦戦している方もいますが、慣れると調べるのもどんどん早くなっていきます。

図鑑をもとに調べます

普段は知っている植物でも実際に図鑑をひいてみると、「え!?そうだったの!?」と
“知ったつもり”になっている植物もたまにあります

本物と見比べて改めて図鑑を引いてみるとこで新たな発見もあります。
細部の観察が大切です。

アセビ

カエデのタネの観察。
植物は子孫を残すために我々の想像を遥かに超える工夫を凝らしています。
カエデのタネはより遠くへ行くためにプロペラの様な羽をつけ、
クルクルと風に乗って飛んでいきます。

カエデのタネ

ワークその3:人に関わる植物ネタ共有
植物は古くから人々の生活に利用されてきました。今回は「人に関わる植物」をテーマに
樹木カードを使って参加者が知っている知識を共有しました。

図鑑や本の紹介
植物の理解を深めるには、様々な本を読んでみることも大切です。
特に図鑑は用途やフィールド、作者の表現方法などにより使いやすさが変わってきます。
自身にあったお気に入りの本を見つけるとより楽しく植物の世界が広がります。

植物は一見地味で敷居の高いように思われがちですが、他の生物と違い
“逃げずにずっとそこにいてくれる”のが良いところです。いつでも調べることができ、
1度その名にたどり着けば、名前の由来や人々との関わり、他の生き物との関係など様々な物語を知ることができます。そしてそれはお客様を楽しませるカギとなります。

そのため図鑑を引いて植物の名を知るスキルはガイドにとってとても重要です。
今回の研修では、それぞれのガイドが植物の魅力を再発見できた研修となりました。

2024年10月SMNGA研修 『伊豆半島の成り立ち』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 伊豆半島の成り立ちやジオについて学ぶ
  • 開催日時:2024年10月30日(水) 10:00~16:00
  • 場所:大室山・城ヶ崎海岸
  • 参加人数:10名

研修内容

10月30日(水)に伊豆半島ジオガイド協会の加藤さんを講師に、大室山や城ケ崎海岸で伊豆半島の成り立ちやジオについて勉強してきました。

伊豆半島は海底火山時代の地層と陸上火山時代の地層に大きくわけられ、伊豆半島にある火山は伊豆東部火山群といわれており、陸上で約60個、海中も合わせると約100個ほどの火山が存在しており、日本では珍しい単成火山だそうです。(日本の火山のほとんどは成層火山)。
伊豆半島にある天城山は海底火山が起きた後、地上でも噴火した2層構造になっているため、あのような標高の高い山なのだそう。

午前中は大室山に登る予定でしたが、ガスのため何も見えなかったので、城ケ崎海岸に移動し大室山が噴火したときの溶岩が流れた後を観察しました。
このように扇状地系になっているものを、溶岩扇状地というそうです。

溶岩扇状地(赤丸部分)

その後に観音浜ポットホールへ移動。直径が約90センチ、数百年程の歳月をかけて塩類風化(タフォニ)によりできた大きな円形の穴を見ました。(中には大きな丸い石があります)

午後からは大室山に移動し、リフトで山頂に行きました。大室山は約4000年前の噴火によりできたそう。山頂から当時どのように溶岩が流れ出たのかを観察しました。午前中に行った城ケ崎の払火山の場所なども確認することができました。上から見ると、全体の様子が分かるので午前中に見たことや学んだことを復習できました。

大室山の山頂より

現在私たちが見ているものは、ものすごい歳月をかけて今の形になっているんだと改めて自然の偉大さを感じさせられました

今回研修に参加した協会のメンバーと講師の加藤さん

2024年10月SMNGA研修 『みんなの気象体験』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 山岳気象シナリオの作成方法を学ぶ
    ・ 所属ガイド6名による講演
  • 開催日時:2024年10月23日(水) 10:00~16:00
            10月24日(木)9:15~16:00
  • 場所:八ヶ岳自然文化園
  • 参加人数:20名(延べ)

研修内容

気象遭難を回避するために天気図をどのように使って行動判断すれば良いのか。当会所属の気象予報士でもあるガイドが開発した「山岳気象シナリオ・シート」を使って気象リスクを評価する練習を行いました。

初参加者でも天気図の読み取り方を教わり、自信を持って気象判断を行なっていました。今後は実地で経験を重ねることで迅速な判断ができるようになるでしょう。

2日目は6名のガイドが登壇し、気象体験談を披露しました。山岳気象シナリオ・シートの活用事例や各ガイドの得意エリアにおける気象の地域特性をテーマに熱のこもったトークが続きました。また2名のガイドからは気象遭難の実例が紹介されました。両名ともガイドになる前の体験で、事故をきっかけにガイドになる決意をしたそうです。
天候が悪化すると登山者はどのように追い込まれていくのか、あるいはどの時点で山行を中断すべきなのか。経験がないと想像がつきにくいのですが、このような研修を繰り返し私たちは研鑽を続けています。

2024年9月SMNGA研修 『上高地の時空を散歩する』

研修の概要

  • 研修の目的:
    外部講師を招いて、「上高地の時空を散歩する」をテーマに、上高地と周辺の山々の成り立ちやガイドトークのコツを学ぶ。
  • 開催日時:2024年9月25日(水) 10:00~26日(木)14:30
  • 場所:上高地(大正池~ワサビ沢付近)
  • 参加人数:13名

研修内容

技術士事務所「地久学舎」の富樫均さんを講師にお迎えして、天気に恵まれた上高地で2日間の「時空散歩」をしてきました。
富樫さんにはこれまで4回、長野県内各所で地形・地質に目を向けたガイドツアーを考える研修をお願いしてきました。普段山を歩いていても目に留めない場所を地学の目線でピックアップし、ガイドに役立つ内容を噛み砕いて解説いただけるので人気の研修です。

穂高連峰の展望地では、穂高連峰の岩山はどのようにできたか説明を受けました。
穂高がかつて火山だったとは現在の姿から想像が難しいですが、175万年前に巨大噴火を起こし、噴火と同時に地表が陥没していく巨大なカルデラ火山でした
穂高連峰は噴火しながら大量の火山灰がカルデラ内に溜まり、熱によって溶結した溶結凝灰岩が約5000m隆起し侵食され、硬い岩峰が残ったものです。
梓川の河原には多種類の石ころが転がり、溶結凝灰岩の観察もしました。

穂高連峰を見ながら巨大カルデラ火山を想像します
溶結凝灰岩を河原で観察

梓川沿いのほとんど平坦な散策路を歩いて大正池に着くと目の前にドーンを迫る焼岳の景色を見ながら上高地の成り立ちの解説に耳を傾けます。
1万2000年以前には焼岳火山群は存在せず、古梓川は岐阜側に流れていました。
1万2000年前に焼岳火山群の噴火によって古梓川は堰き止められ、古上高地湖ができ、やがて決壊して山岳域に珍しい平坦地が出来上がりました。そして長い年月を経て現在の上高地が出来上がっています
そんな上高地の成り立ちを知らずに観光に訪れる人がほとんどだと思いますが、学ぶことで過去のダイナミックな変化を想像し、現在の緑豊かな森と岩山の風景に魅せられ、未来の上高地を考える機会になりました。

焼岳を見ながら上高地の成り立ちの説明を受けます
焼岳と大正池

ウェストン碑がはめ込まれている滝谷花崗閃緑岩は約140万年前にできたもので、穂高連峰を作っている溶結凝灰岩と共に桁外れに速い速度で隆起して地表に出てきた世界一若い花崗岩といわれています。140万年前が世界一若い、というすぐに納得し難い年代の考え方ですが、地学は億単位の話、慣れが必要です。

ウェストン碑がはめ込まれている滝谷花崗閃緑岩の説明をする富樫氏

そんな億単位の岩が露頭しているところも観察しにいきました。
日本列島の土台となる約2億年前の深海底に堆積した泥岩が徳本峠分岐から少し徳沢寄りに見られます。これまでとは違う薄く剥がれるように割れる岩です。

2億年前の日本列島の土台となる泥岩の路頭

最後に自然状態の梓川が見られる場所へ。本来の上高地の姿と説明を受けました。現在の上高地は梓川沿いが広く護岸工事されています。観光のための宿泊施設や散策路、管理道を維持する必要があるためです。
観察したポイントは土砂が流れ入り、中州が作られたり流されたり、川の流れが変わったりと人の手が加わっていない唯一の場所だということでした。上高地が1万年後、10万年後自然のままならどんな変化をしていくのか、護岸工事がされていくのか、未来を想像しながら研修が終了しました。

工事など人の手が入っていない唯一の自然状態の梓川

地学の話は一度聞いただけではなかなか理解が難しいところがありますが、ガイドツアーに活かせるように質問、疑問を講師にぶつけ、充実した「時空を散歩する」研修になりました。

2024年6月SMNGA研修 『あるある症例から学ぶ早期発見・予防法と初期評価の基本』

研修の概要

  • 研修の目的:
    会員から要望のあった症例、および、あるある症例をもとに、普段のガイド活動において実践的で役立つ、予防方法、および、早期発見・早期対応方法を学ぶ。
  • 開催日時:2024年6月30日(日) 9:30~15:40
  • 場所:アイプラザ豊橋
  • 参加人数:13名

研修内容

ガイドは、安全管理を徹底的に!傷病者を出さないための予防法、早期発見、早期対応。でも、具体的にはどうやって?

参加者からの事前リクエスト内容も含む、実際の症例、7症例+αをもとに、その場に居合わせた時に、ガイドとしてどのような行動をとったらよいか?
1つ1つの症例に関して、観察ポイントや、どんな声かけをして正確な情報を引き出すのか、本人からの主観的な訴えだけではなく、客観的な評価方法、考え方のプロセスについて、参加者全員で意見を出し合い、考え抜きました

研修の様子

外傷性の怪我は視覚で確認できることが多く対応しやすい。一方、内因性の疾患のことは、わかりにくい。だからこそ、参加者全員で可能性のあるいくつもの要因を探し出してみました。実際に、要因は1つだけでなく複数ある場合も多いです。複数の要因から、さらに情報を正確に得ることによって消去法で絞り出していきます。そして、これから起こり得ることの予測をして具体的な早期対応、予防をはかっていくことが重要です。
 白熱した意見交換の後は、どうしてそのような症状が起こったのか、登山ガイド&DIMM山岳看護師でもある講師から根拠となる医学的視点における病態生理、メカニズムについて説明がありました。

メカニズムを理解した上で、会員から似たような症例の経験談を語ってもらいました。会員間でお互いに情報共有することで、さらに理解を深めることができます。会員ひとりひとりの経験談こそが、どう声かけするか、ガイドとしての役割、予防方法は?今後の登山行動計画は?ガイド視点で考え、あした。

脱水・熱中症対策

夏山本番に向けて、脱水、熱中症対策は欠かせないです。
経口補水液あれこれ。市販のものもあるけれど、どの家庭にもあるものでお手軽に手作りできます。顧客が真水しか持っていない時は、どう対応する?顧客が持ってきているものを有効活用!飲み比べ、試飲してみました。

あるある症例に対して、それぞれのガイド達の予防を含めたオススメ対応グッズ!
これこそフィールドで役立つグッズの紹介あれこれ!

疲労回復、免疫力アップ
かぼすジュースレシピ
ソール剥がれに自転車のタイヤチューブ(自転車屋さんで破棄されるチューブでOK)
フリクション抜群!
靴擦れ対策、目の洗浄・・・。

その他、こちらにアップ仕切れない数々のグッズに講師も写真を撮りまくりでした(笑)

本格的な夏山シーズン前に、参加者全員で真剣に考え意見交換、情報共有。
まさに、フィールドで役立つ実践的な内容の確認ができた研修会でした