2024年11月SMNGA研修 『秋の植物観察~入門編~』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 植物を図鑑で調べるスキルを身につけ、解説知識を得る。
  • 開催日時:2024年11月10日(日) 9:30~16:00
  • 場所:田貫湖ふれあい自然塾
  • 参加人数:8名

研修内容

今回は生憎のお天気でなかなか外に出られなかったため、
屋内を中心にワークをしながら植物についての理解を深めました。

ワークその1:フィールドビンゴの作成
9つのマスに、今の季節に観察できそうなものを記入してもらい、
実際に外に出て探してみるゲーム。他の人が作ったビンゴを比べてみることで
自分には無い表現方法や視点を学ぶことができました。実際にやってみることで
フィールドを新たな視点で楽しみながら見ることができるのでおすすめです

フィールドビンゴの様子

ワークその2:図鑑トレーニング
僅かな晴れ間を狙って外へ!
実際に図鑑を使って樹木を調べます。
最初は図鑑で調べることに苦戦している方もいますが、慣れると調べるのもどんどん早くなっていきます。

図鑑をもとに調べます

普段は知っている植物でも実際に図鑑をひいてみると、「え!?そうだったの!?」と
“知ったつもり”になっている植物もたまにあります

本物と見比べて改めて図鑑を引いてみるとこで新たな発見もあります。
細部の観察が大切です。

アセビ

カエデのタネの観察。
植物は子孫を残すために我々の想像を遥かに超える工夫を凝らしています。
カエデのタネはより遠くへ行くためにプロペラの様な羽をつけ、
クルクルと風に乗って飛んでいきます。

カエデのタネ

ワークその3:人に関わる植物ネタ共有
植物は古くから人々の生活に利用されてきました。今回は「人に関わる植物」をテーマに
樹木カードを使って参加者が知っている知識を共有しました。

図鑑や本の紹介
植物の理解を深めるには、様々な本を読んでみることも大切です。
特に図鑑は用途やフィールド、作者の表現方法などにより使いやすさが変わってきます。
自身にあったお気に入りの本を見つけるとより楽しく植物の世界が広がります。

植物は一見地味で敷居の高いように思われがちですが、他の生物と違い
“逃げずにずっとそこにいてくれる”のが良いところです。いつでも調べることができ、
1度その名にたどり着けば、名前の由来や人々との関わり、他の生き物との関係など様々な物語を知ることができます。そしてそれはお客様を楽しませるカギとなります。

そのため図鑑を引いて植物の名を知るスキルはガイドにとってとても重要です。
今回の研修では、それぞれのガイドが植物の魅力を再発見できた研修となりました。

登山ガイドと登る金時山(1212m)

概要

  • 概要:
    一般登山者、一般登山希望者に対して、山岳及び自然ガイドに関する事を行い、安全で楽しい登山活動と自然体験活動の普及、発展に寄与する事を目的とした。
  • 開催日時:2024年11月16日(土)
  • 場所:金時山(1212m)
  • 参加人数:14名+静岡新聞記者2名

内容

11月16日(土)に主催:登山ガイドと登る金時山(1212m)を実施しました。普段から山に登る方もガイドと登山することによって、新しい技術を身に着けて頂いたり、自然を楽しんでもらうことを目的としました。参加者からは、また企画があれば是非参加したいとの声も多くいただき、とても内容の濃い主催登山でした。

ガイドから金時山の説明を受けています。
靴ひもの結び方のレクチャー中
全員でパチリ

2024年10月SMNGA研修 『伊豆半島の成り立ち』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 伊豆半島の成り立ちやジオについて学ぶ
  • 開催日時:2024年10月30日(水) 10:00~16:00
  • 場所:大室山・城ヶ崎海岸
  • 参加人数:10名

研修内容

10月30日(水)に伊豆半島ジオガイド協会の加藤さんを講師に、大室山や城ケ崎海岸で伊豆半島の成り立ちやジオについて勉強してきました。

伊豆半島は海底火山時代の地層と陸上火山時代の地層に大きくわけられ、伊豆半島にある火山は伊豆東部火山群といわれており、陸上で約60個、海中も合わせると約100個ほどの火山が存在しており、日本では珍しい単成火山だそうです。(日本の火山のほとんどは成層火山)。
伊豆半島にある天城山は海底火山が起きた後、地上でも噴火した2層構造になっているため、あのような標高の高い山なのだそう。

午前中は大室山に登る予定でしたが、ガスのため何も見えなかったので、城ケ崎海岸に移動し大室山が噴火したときの溶岩が流れた後を観察しました。
このように扇状地系になっているものを、溶岩扇状地というそうです。

溶岩扇状地(赤丸部分)

その後に観音浜ポットホールへ移動。直径が約90センチ、数百年程の歳月をかけて塩類風化(タフォニ)によりできた大きな円形の穴を見ました。(中には大きな丸い石があります)

午後からは大室山に移動し、リフトで山頂に行きました。大室山は約4000年前の噴火によりできたそう。山頂から当時どのように溶岩が流れ出たのかを観察しました。午前中に行った城ケ崎の払火山の場所なども確認することができました。上から見ると、全体の様子が分かるので午前中に見たことや学んだことを復習できました。

大室山の山頂より

現在私たちが見ているものは、ものすごい歳月をかけて今の形になっているんだと改めて自然の偉大さを感じさせられました

今回研修に参加した協会のメンバーと講師の加藤さん

2024年10月SMNGA研修 『みんなの気象体験』

研修の概要

  • 研修の目的:
    ・ 山岳気象シナリオの作成方法を学ぶ
    ・ 所属ガイド6名による講演
  • 開催日時:2024年10月23日(水) 10:00~16:00
            10月24日(木)9:15~16:00
  • 場所:八ヶ岳自然文化園
  • 参加人数:20名(延べ)

研修内容

気象遭難を回避するために天気図をどのように使って行動判断すれば良いのか。当会所属の気象予報士でもあるガイドが開発した「山岳気象シナリオ・シート」を使って気象リスクを評価する練習を行いました。

初参加者でも天気図の読み取り方を教わり、自信を持って気象判断を行なっていました。今後は実地で経験を重ねることで迅速な判断ができるようになるでしょう。

2日目は6名のガイドが登壇し、気象体験談を披露しました。山岳気象シナリオ・シートの活用事例や各ガイドの得意エリアにおける気象の地域特性をテーマに熱のこもったトークが続きました。また2名のガイドからは気象遭難の実例が紹介されました。両名ともガイドになる前の体験で、事故をきっかけにガイドになる決意をしたそうです。
天候が悪化すると登山者はどのように追い込まれていくのか、あるいはどの時点で山行を中断すべきなのか。経験がないと想像がつきにくいのですが、このような研修を繰り返し私たちは研鑽を続けています。

2024年9月SMNGA研修 『上高地の時空を散歩する』

研修の概要

  • 研修の目的:
    外部講師を招いて、「上高地の時空を散歩する」をテーマに、上高地と周辺の山々の成り立ちやガイドトークのコツを学ぶ。
  • 開催日時:2024年9月25日(水) 10:00~26日(木)14:30
  • 場所:上高地(大正池~ワサビ沢付近)
  • 参加人数:13名

研修内容

技術士事務所「地久学舎」の富樫均さんを講師にお迎えして、天気に恵まれた上高地で2日間の「時空散歩」をしてきました。
富樫さんにはこれまで4回、長野県内各所で地形・地質に目を向けたガイドツアーを考える研修をお願いしてきました。普段山を歩いていても目に留めない場所を地学の目線でピックアップし、ガイドに役立つ内容を噛み砕いて解説いただけるので人気の研修です。

穂高連峰の展望地では、穂高連峰の岩山はどのようにできたか説明を受けました。
穂高がかつて火山だったとは現在の姿から想像が難しいですが、175万年前に巨大噴火を起こし、噴火と同時に地表が陥没していく巨大なカルデラ火山でした
穂高連峰は噴火しながら大量の火山灰がカルデラ内に溜まり、熱によって溶結した溶結凝灰岩が約5000m隆起し侵食され、硬い岩峰が残ったものです。
梓川の河原には多種類の石ころが転がり、溶結凝灰岩の観察もしました。

穂高連峰を見ながら巨大カルデラ火山を想像します
溶結凝灰岩を河原で観察

梓川沿いのほとんど平坦な散策路を歩いて大正池に着くと目の前にドーンを迫る焼岳の景色を見ながら上高地の成り立ちの解説に耳を傾けます。
1万2000年以前には焼岳火山群は存在せず、古梓川は岐阜側に流れていました。
1万2000年前に焼岳火山群の噴火によって古梓川は堰き止められ、古上高地湖ができ、やがて決壊して山岳域に珍しい平坦地が出来上がりました。そして長い年月を経て現在の上高地が出来上がっています
そんな上高地の成り立ちを知らずに観光に訪れる人がほとんどだと思いますが、学ぶことで過去のダイナミックな変化を想像し、現在の緑豊かな森と岩山の風景に魅せられ、未来の上高地を考える機会になりました。

焼岳を見ながら上高地の成り立ちの説明を受けます
焼岳と大正池

ウェストン碑がはめ込まれている滝谷花崗閃緑岩は約140万年前にできたもので、穂高連峰を作っている溶結凝灰岩と共に桁外れに速い速度で隆起して地表に出てきた世界一若い花崗岩といわれています。140万年前が世界一若い、というすぐに納得し難い年代の考え方ですが、地学は億単位の話、慣れが必要です。

ウェストン碑がはめ込まれている滝谷花崗閃緑岩の説明をする富樫氏

そんな億単位の岩が露頭しているところも観察しにいきました。
日本列島の土台となる約2億年前の深海底に堆積した泥岩が徳本峠分岐から少し徳沢寄りに見られます。これまでとは違う薄く剥がれるように割れる岩です。

2億年前の日本列島の土台となる泥岩の路頭

最後に自然状態の梓川が見られる場所へ。本来の上高地の姿と説明を受けました。現在の上高地は梓川沿いが広く護岸工事されています。観光のための宿泊施設や散策路、管理道を維持する必要があるためです。
観察したポイントは土砂が流れ入り、中州が作られたり流されたり、川の流れが変わったりと人の手が加わっていない唯一の場所だということでした。上高地が1万年後、10万年後自然のままならどんな変化をしていくのか、護岸工事がされていくのか、未来を想像しながら研修が終了しました。

工事など人の手が入っていない唯一の自然状態の梓川

地学の話は一度聞いただけではなかなか理解が難しいところがありますが、ガイドツアーに活かせるように質問、疑問を講師にぶつけ、充実した「時空を散歩する」研修になりました。

ガイドツアーのお知らせ

今秋に静岡山岳自然ガイド協会主催のガイドツアーを行います!
ガイドと山に登れば登山がさらに楽しくなります!
是非、山のガイドと一緒に登りませんか。

ガイド付き登山には次のような魅力があります

ガイド付き登山の魅力

  • 山の知識や魅力を学ぶことが出来ます。
  • 安全に登山出来ます。
  • ガイドから山の魅力を際立たせる話を聞くことが出来ます。
  • 歩き方のアドバイスや、体の使い方を学ぶことが出来ます。
  • 靴ひもの結び方などの基礎を学ぶことが出来ます。

ツアーについて

  • 目的の山:金時山(1212m)
  • 日時:11月16日(土) 8時~15時ごろ
  • 集合・解散場所:長尾(乙女駐車場)@御殿場 GoogleMap
  • 募集人数:12名程度(小学生以上) 最少催行人員6名
    ※少雨決行
  • 参加費:4,000円(保険料込み)
  • 持ち物:
  • リュック、登山靴、雨具(セパレートタイプ)、ライト、お昼ご飯(行動食)、帽子、手袋、水筒、防寒着
    ☆あると便利なもの=トレッキングポール、サングラスなど

お申し込み先

担当:大嶽(おおたけ)
メール:kazuhiko.otake☆gmail.com (☆を@にしてメールを送信してください)
電話:090-4854-6260
※詳細はお申し込み後に、ご連絡いたします。

2024年6月SMNGA研修 『あるある症例から学ぶ早期発見・予防法と初期評価の基本』

研修の概要

  • 研修の目的:
    会員から要望のあった症例、および、あるある症例をもとに、普段のガイド活動において実践的で役立つ、予防方法、および、早期発見・早期対応方法を学ぶ。
  • 開催日時:2024年6月30日(日) 9:30~15:40
  • 場所:アイプラザ豊橋
  • 参加人数:13名

研修内容

ガイドは、安全管理を徹底的に!傷病者を出さないための予防法、早期発見、早期対応。でも、具体的にはどうやって?

参加者からの事前リクエスト内容も含む、実際の症例、7症例+αをもとに、その場に居合わせた時に、ガイドとしてどのような行動をとったらよいか?
1つ1つの症例に関して、観察ポイントや、どんな声かけをして正確な情報を引き出すのか、本人からの主観的な訴えだけではなく、客観的な評価方法、考え方のプロセスについて、参加者全員で意見を出し合い、考え抜きました

研修の様子

外傷性の怪我は視覚で確認できることが多く対応しやすい。一方、内因性の疾患のことは、わかりにくい。だからこそ、参加者全員で可能性のあるいくつもの要因を探し出してみました。実際に、要因は1つだけでなく複数ある場合も多いです。複数の要因から、さらに情報を正確に得ることによって消去法で絞り出していきます。そして、これから起こり得ることの予測をして具体的な早期対応、予防をはかっていくことが重要です。
 白熱した意見交換の後は、どうしてそのような症状が起こったのか、登山ガイド&DIMM山岳看護師でもある講師から根拠となる医学的視点における病態生理、メカニズムについて説明がありました。

メカニズムを理解した上で、会員から似たような症例の経験談を語ってもらいました。会員間でお互いに情報共有することで、さらに理解を深めることができます。会員ひとりひとりの経験談こそが、どう声かけするか、ガイドとしての役割、予防方法は?今後の登山行動計画は?ガイド視点で考え、あした。

脱水・熱中症対策

夏山本番に向けて、脱水、熱中症対策は欠かせないです。
経口補水液あれこれ。市販のものもあるけれど、どの家庭にもあるものでお手軽に手作りできます。顧客が真水しか持っていない時は、どう対応する?顧客が持ってきているものを有効活用!飲み比べ、試飲してみました。

あるある症例に対して、それぞれのガイド達の予防を含めたオススメ対応グッズ!
これこそフィールドで役立つグッズの紹介あれこれ!

疲労回復、免疫力アップ
かぼすジュースレシピ
ソール剥がれに自転車のタイヤチューブ(自転車屋さんで破棄されるチューブでOK)
フリクション抜群!
靴擦れ対策、目の洗浄・・・。

その他、こちらにアップ仕切れない数々のグッズに講師も写真を撮りまくりでした(笑)

本格的な夏山シーズン前に、参加者全員で真剣に考え意見交換、情報共有。
まさに、フィールドで役立つ実践的な内容の確認ができた研修会でした

野鳥を中心としたガイド 研修

研修の概要

  • 研修の目的:
    夏山ガイドに使える野鳥を中心とした自然ガイド
  • 開催日時:2024年5月24日(金) 〜25日(土)
  • 場所:上高地周辺
  • 参加人数:8名

研修内容

会では初の野鳥を対象とした自然解説研修。皆さんがよくガイドされると思われる上高地で研修を行いました。上高地は奥穂高岳や焼岳などの百名山のベースとして多くの登山客が訪れますが、探鳥地として多くのガイドブックで紹介されています。実際に5月から8月にかけて多くの野鳥がさえずり、都市部で見られる鳥から亜高山帯に特化した鳥まで多くの野鳥が観察できます

研修2日目。小梨平の朝

今回の研修は2日間かけて行いました。2日かけた理由は、日中だけではなく夜間に鳴く鳥がいるため、それらの鳥を確認するためにテントを張り、夜間聞こえてくる鳥の鳴き声を確認してもらいたいのが一点。もう一点は、野鳥は早朝活発にさえずる傾向にあるため、早朝から研修を開始し、より多くの野鳥をガイドの皆さんに確認してもらいたいことがありました。実際に夜はヨタカジュウイチなど夜間にも鳴く鳥の鳴き声が聞こえてきました。また早朝は多くの鳥のさえずりが上高地の爽やかな朝に響きわたり、オオルリキビタキなど人気の鳥を目視することができました。

研修の様子


幸いなことに2日間とも天気に恵まれ、上高地周辺は絶好の散策日和になりました。小梨平を出発し、河童橋を渡って岳沢湿原へ。岳沢湿原周辺の林内ではウグイスカケスなど名前は聞いたことあるけど普段あまりじっくり観察しない鳥たちを観察し、水辺ではオシドリマガモなど、夏の上高地を代表する鳥たちを観察しました。

岳沢からの眺め

岳沢湿原を観察した後は岳沢方面に登り、標高を上げて鳥類相の違いを体感しました。鳥は標高が高いほど数は少なくなる傾向にあります。しかし標高が上がり、植生環境が変わると、観察できる種も変わってきます。ホシガラスやイワヒバリはその代表ですが、今回は見ることができませんでした。その代わり、湿原周辺では確認できなかったコマドリルリビタキといった鳥たちの鳴き声が確認できました。

実際に野鳥を観察しながら山のガイドをするのはかなりの時間立ち止まらないと難しいです。そのため、野鳥の解説をしながらガイドをするには、鳴き声を覚えることが重要になります。今回はガイドに使える種の鳴き声を中心にレクチャーし、野鳥を目視するだけではなく歩きながら解説をするノウハウを身に着けてもらいました。

【今回確認できた主な野鳥】

オオルリ
キビタキ
オシドリ

富士山の成り立ち 宝永火口について

研修の概要

  • 研修の目的:
    富士山の成り立ち、特に宝永火口について、外部講師をお招きし考える。
  • 開催日時:2024年5月12日(日)10:00 〜16:00
  • 場所:富士山 宝永火口 御殿場口太郎坊周辺
  • 参加人数:14名

研修内容

山梨県富士山科学研究所の亀谷伸子さんを講師にお迎えして、会員14名と宝永火口の成り立ちや富士山がどのような山なのかについて学習しました
宝永火口では、火山弾(弾道を描いて飛んでくるものの中でも特徴的な形を持つもの)の観察を行ったり、岩脈を実際に見て説明を受けました。岩脈は宝永噴火でえぐれたことによりマグマが上がってきた跡が露出したものだそうです。

岩脈

宝永火口は第一火口だけでも、山頂の火口より大きいのでとても迫力があります

宝永火口に向かう途中


講師の亀谷さんの説明を受ける様子
火山弾

午後は御殿場口の太郎坊に移動して、宝永火口の噴火により降ってきた噴出物の観察を行いました。

危急時対応研修

研修の概要

  • 研修の目的:
    山中で発生しうるトラブル、事故、傷病に対し、遅滞なく現地対応できるように研修、訓練を行うことを目的とする。
  • 開催日時:2024年4月20日(土)9:00 〜18:00
  • 場所:長野県小諸市 安藤百福記念アウトドアアクティビティセンター
  • 参加人数:16名

研修内容

山中で起こり得るトラブル、滑落、低体温症、顧客の怪我のうち比較的遭遇しやすい傷病への対応と習熟訓練

低体温症の現場でできる応急手当の方法

山での大量遭難事故は、偶発性低体温症が関わっていると言っても過言ではありません。そして現場にいる人間全部が同じ状況下にあるので、ガイド自身も被災を免れないものです。
したがって、低体温症のリスクを感じたら速やかに防風、断熱、加温、エネルギー補給のすべての処置を速やかに講じる必要が有ります。
低体温症は初期の軽度のものでも、思考力を低下させるので、半ばルーチンの様に処置を半自動化して行えるようにする必要が有り、その訓練を行いました。
(この日朝いちばんは、外より暖房が入っていなかったコンクリート建築の室内の方が寒かったので、全員半袖のTシャツになり、サーキュレーターで風を送りながら実習を行いました。)

軽いからみんな持ってるサバイバルシートの使用法研究

お客様のザックにもきっと入っている定番のアイテム「サバイバルシート」。非常時にただ被れば良いと思っていませんか?
実験的に昔、毛布数枚分の温かさという触れ込みのサバイバルシートで山中ビバークを試みた経験があります。結果サバイバルシート1枚掛けるだけでは寒くて眠ることができませんでした。逆に考えると下着のすぐ上にサバイバルシートを巻き、その上から保温着、雨具などを着た方が温かく過ごすことができます。そのうまいやり方とはどういったものがあるのかを研究し合いました。(極寒地では皮膚に近いところに防水層を配し、衣服のダウンなどの断熱層を水分からシャットアウトして濡れを防ぎ、保温効果を落とさなくするというVBL理論というものもあります。)

靴底剥がれへの対応

登山靴のソールはウレタン系の接着剤で張り付けている物がほとんど。ウレタン系の接着剤は柔軟性があり、強力な接着力がありますが、一つ困った欠点があります。それは加水分解です。長いこと使っていたテントなどの山道具の防水コーティングがいつの間にかベタベタになったり、長く使っていたスキーブーツがいきなり壊れるなど、ウレタン系樹脂は空気中の水分と反応して劣化します。これが山行中に登山靴のソールが剥がれる原因です。空気中の湿気が原因なので、残念ながら大切に保管してきた靴でも古くなったら起きることがあります。ガイド山行中、こうしたお客様に遭遇する機会がたまにあり、なるべく素早く確実に応急処置するための対処法を披露し合いました。

滑落した登山者への対応

起きてはならない事故ですが、毎年滑落事故はニュースになります。そういう事故に遭遇した時にガイドとしてどういう風に対応するのか、要救助者へのロープを使ったアプローチ、それ以上要救助者が2次遭難をしないための対処、現場でできる救助法の研修を行いました。これらは救急法の研修と同じく、定期的に行わないといざという時に体が動きません。

滑り易い斜面(雪の斜面等)で多人数のお客様に安全に通過して頂くための固定ロープの使用法

ザックを使った搬送法の復習

足首捻挫の様々な固定法の研修

最低1年に一回以上、危急時に備えた動きや対処法を研修することで、事故そのものの防止や対処で身体が動くようになります。